本書は東山彰良氏の2008年に刊行された小説である。まず、私は「路傍」という意味を知らなかったが、ただ単純に、みちばた。路辺。という意味らしい。
この作品はかなり読みやすかった。240ページで比較的短い小説だった。平易な文章と汚い言葉でテンポ良く進んでいく。主人公と友人吉彦は28歳のチンピラ。二人はいつも同じバーで酒を飲み、酔っ払いのおっさんがいれば金を掏る。その金でソープランドへ行き、一発かます。そういった世界観で話がトントン展開していく。「セッ〇ス」「タントラセッ〇ス」「マ〇コ」「チ〇コ」「バイアグラ」「一盗二卑三妾四妻」「人間ポンプ」そういった言葉が何気なく沢山出てくる。楽しく読める。
二人はソープランドへ何度も行くのだが、ソープ嬢が毎回「ねえ、私を漢字一文字でいうと何?」と主人公に聞いてくる。お決まりのように聞いてくる。毎回聞かれて主人公はイライラしながらチンピラなりに考える。
そんな会話が話の流れの途中に何度も挟まれて面白い。二人ともチンピラなのにちょっと頭がいい、というか生きる上で獲得した知恵なのかもしれないが、幾度と度重なる逆境を一発逆転していく。難しいことは何一つ書いていないが、ちょこちょこ深いなと思うことが書いてある。そう思わされているだけなのかもしれないが。例として引用する。
どんなタフなやつでも、ひとりくらいは神がいた方がいい。自分だけの神が。そうじゃなければ、人生にペシャンコにされちまう。ニーチェが狂っちまったのは、思うに、そこんとこがわかってなかったからだ。
路傍 (集英社文庫)
なぜチンピラがニーチェなんか知っているんだとは思ったが、言い回し・口調がさっぱりしていて格好良かった。
まとめ
普段は小説を読まないけれど、読んでみようかしらと思った人に是非お勧めします。下ネタが苦手な人以外は。